{"created":"2023-05-15T13:48:21.588750+00:00","id":2875,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"97581dda-c900-4470-a34d-c1e39ff8d21b"},"_deposit":{"created_by":1,"id":"2875","owners":[1],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"2875"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:omu.repo.nii.ac.jp:00002875","sets":["2062:130","40:502:509:574:603"]},"author_link":["7419","7420"],"item_2_alternative_title_20":{"attribute_name":"その他のタイトル","attribute_value_mlt":[{"subitem_alternative_title":"バルザックのジョルジュ・サンド像 : 女性作家カミーユ・モーパン"}]},"item_2_biblio_info_7":{"attribute_name":"書誌情報","attribute_value_mlt":[{"bibliographicIssueDates":{"bibliographicIssueDate":"2007-03-31","bibliographicIssueDateType":"Issued"},"bibliographicPageEnd":"139","bibliographicPageStart":"115","bibliographicVolumeNumber":"2","bibliographic_titles":[{"bibliographic_title":"人間科学"}]}]},"item_2_description_16":{"attribute_name":"フォーマット","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"application/pdf","subitem_description_type":"Other"}]},"item_2_description_4":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"バルザックの『ベアトリクス』に登場する女性作家カミーユ・モーパンは、バルザックと親しかったジョルジュ・サンドがモデルである。本稿ではカミーユという人物を通して、バルザックが思い描くサンド像を、他の男性作家たちの女性作家論と比較しながら分析する。まず、femme ecrivainとfemme auteurの違いを指摘しておきたい。というのも、バルザックは両者を明確に区別し、カミーユはecrivainであってfemme auteurではないと否定しているからだ[以下、便宜上femme ecrivainを「女性作家」、femme auteurを「女流作家」と訳す]。実際、バルザックの未完の作品『女流作家』には、カミーユと性質の全く異なる女性が登場する。主人公の女性は、7月王政期に流行した「ジャンリス夫人風の文学」[道徳的な教訓に満ちた作品]を目指すブルジョワ作家である。作者hはこうした文学を痛烈に批判し、彼女をbas-bleu[ブルーストッキング]と呼んで「作家になることで、女ではなくなる」と述べている。Bas-bleuという言葉は1820年代に「文学かぶれの女」という意味で使われ始め、40年代にはbas-bleuは新聞や本、芝居などで非難・中傷の的になった。その根底には、当時のジェンダー規範が関っている。フランス革命以降、公的生活と私的生活が分離し、女性の役割は「妻」「母」という家庭内の領域に限られるようになる。それゆえ、女性が作家となって私的空間から公的空間に移行することはジェンダー規範に抵触し、「女ではなくなる」ことを意味する。さらに「作家」は知的創造に関わり、男の職業でも高次の機能を果たすものであった。それを女性が行うことは男の眼には「力の簒奪」と映ったのである。また、Bas-bleu批判には性的メタファーが用いられたが、それは「出版=思想の切り売り」とみなす「思想の売春」という考えに基づく。それは男性作家にも付きまとう強迫観念で、ましてや女性の場合、その肉体と結びつけられ「売春婦」扱いされた。男の側からのこうした批判の矢面に立ったのが、ジョルジュ・サンドであった。したがって、女性が公的空間で知的能力を発揮するのはエゴイズムの所産とみなされ、その能力は家庭内に留めるべきだとされた。バルザックも例外ではなく、女性の作家が次々に輩出される当時の傾向をサンド主義と呼んで非難している。ただし、サンド本人に関しては、例外的存在として、その能力を高く評価した。それゆえ、サンドをモデルとしたカミーユ・モーパンは「女流作家」とは違い、真の天分に恵まれた作家として登場する。実際、カミーユは生い立ちや身体的特徴など様々な点でサンドに酷似している。とりわけ両者とも男の特徴を有し、両性具有的な性質を帯びている。自己の内に自立精神を育み、男の特権とされる知性と行動力を備え、しかも女の魅力に輝くカミーユはまさに両性具有の夢を実現していた。彼女の自由な生き方は、伝統的な道徳を重んじる人々には「怪物じみたこと(monstruosite)」として映っている。彼らにとって彼女は精神的にも肉体的にも堕落した女で、既成秩序を乱す「怪物」であった。それは「女流作家」に対する当時の社会の反応を写し取ったものである。それに対して語り手は、カミーユの怪物性はむしろ、「女性特有の弱さ」を持たず、普通の人間を超越した、その偉大性にあるとしている。彼女の悲劇は、彼女が偉大すぎて男の愛の対象になり得ないことであった。カミーユがカリストとの愛に破れたのも、その力ゆえんであった。それはバルザックがサンドに見出したもので、カミーユ=サンドは力を獲得することで、従来の男女の支配関係を逆転させたが、その優越性が女としての幸福を妨げてしまったと、彼は考えている。カミーユは最後には地上の愛を断念し、僧院に引きこもる。同時に、自らの作家人生を「エゴイズムの発作」と呼んで全否定するようになる。当時の社会的規範を超越したかのように見えたカミーユも結局、こうした規範を内在化せざるを得ない。そこには、当時のジェンダー観に影響されたバルザックの考えが反映されている。カミーユのmonstruositeとしてはさらに、母性愛の欠如を挙げることができる。バルザックは母性愛を最も崇高な感情とみなし、母親になることを女性の「天職」と考えている。彼は『人間喜劇』の中で、不幸な結婚に苦しむ女性を多く登場させているが、サンドのように結婚制度への異議申し立てをするのではなく、満たされない愛情を母性愛に昇華するよう勧めている。その観点に立てば、母性愛を拒否するカミーユは一種の奇形(monstruosite)であったが、彼女もまたカリストの「知性の母親」になることで、「怪物」から崇高な「母親」に変貌する。それに対して2人の子どもの母であるサンドは母性愛を重視するものの、バルザックの勧めるような、父権制の枠の中で献身的な母親の役割を果たすのではなく、女としての自己実現と母性愛を両立させようとしている。そこにサンドとバルザックの考えの相違が見出せる。最後にカミーユの「作家」性について述べておきたい。バルザックには女性がなぜ書くのか、どのような主題で書くのかといった女のエクリチュールへの問題意識は見当たらない。カミーユの作家活動は書くことではなく、むしろ行動そのものにあり、言葉の力によって他者の心を支配し、その運命の「作者」になることであった。『ベアトリクス』では男の登場人物はすべて、彼女に操られる客体であって、行動の主体ではない。それもまた、彼女のmonstruositeの本質を成している。バルザックはカミーユによって象徴される女性の脅威を悪魔祓いするためにも、彼女にそれまでの人生を全否定させ、僧院に追いやって沈黙を課したように思える。そこに、優れた才能を持つ女性作家を評価しながらもその力を恐れる、バルザックの両面的な感情が見出せる。そしてそれが、バルザックのジョルジュ・サンド観でもあった。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_2_description_6":{"attribute_name":"引用","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"人間科学. 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